先ず、本稿は継続して書き続ける内容にしたいと考えています。
その為の材料だと考えてごらんください。
藤森茂さんの「ロバート・オッペンハイマー」を読んでいます。
久々に良い本に出合った気がしていて是非皆様にもご紹介したい。
なにより、作者の藤永氏は手紙を含めた一次文献を詳細に吟味し、
オッペンハイマーの人生を克明に表現しています。
無論、初学者が使う量子力学の教科書でも夫々の考え方に対して
その考え方が成立した年代の記述があったりして、
学習者は一定の理解のもとに学習を進められます。
対して、この本を読むならば夫々の時代での人物模様が
克明に感じられて極めて興味深い追及が出来るのです。
例えば、量子力学誕生の1925年、ケンブリッジのファウラー教授
が手に入れた(独)ハイゼンベルグ・ボルン・ヨルダンによる第一論文の
校正稿を見ることが出来たディラックは(むろん感動を抱きながら)
ポアソン括弧での表現を加え、衝撃を与えます。
そして、その直後にオーストリアのシュレディンガーが
波動力学を使いミクロの諸量と古典力学での物理量を対比付け
数学的にも分かり易い表現で量子力学を表現したのです。
その他、オッペンハイマーがハイスクール時代に
「トラブルを意識的に避けたかった事情」や
「内面的に処理しきれなかった」問題を非宗教的な倫理観
で解決していく様子、ユダヤ・キリスト教・イスラム教で
心の安定を得られずにヒンズー教に活路を見出す様子も面白かったです。
その後、ハーバードに進んだオッペンハイマーは
三年間で最優秀の成績を収め卒業し、ケンブリッジに進みます。
また、1922年の文学での奇跡の年をどう過ごしたか、
1925年の物理学での奇跡の年をどう過ごしたか、
オッペンハイマーの人生に大きく関わるのですが、
その二つの軌跡の年にハーバード大学へ入学・卒業を
している事実は特筆すべきです。
他、
ラッセル・ホワイトヘッドによるプリンキピア・マセマティカ
の紹介や、オッペンハイマーが若い日に読んでいた本、
ポアンカレの「現代物理学」
ギブスの「非均一系における非平衡論」
ジールズの「気体分子運動論」
ゾンマーフェルトの「原子構造とスペクトル線」
や、それを知ったハーバードの理論屋ケンプルの驚き
が克明に伝わってきます。ケンブリッジに進み
ラザフォード研究室所属を望みながらJJトムソンの研究室に所属し
コペンハーゲンのメンバーと交流していく様子も
ありありと描き出されています。ご一読されたし。
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